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伝承者7箇条とは、愛農かまど伝承者の理念です。
愛農会では北村さんから愛農かまどの技術と心を受け継いだ野呂由彦さんの強い要望を受けて、2022年6月に「愛農かまど伝承者養成講座」を開催しました。
現在その講座を修了した9名のみなさんが、全国各地で愛農かまどを作るお手伝いをしてくださっています。
これまで45基以上の愛農かまどを作ってこられた野呂さんは
「僕自身もまだ伝承者ではなく、伝承者を志す者の一人です」とおっしゃいます。
その言葉どおり、伝承者への道は終わることはありません。
私たちは養成講座修了生のみなさんにその道を進む道しるべにしていただきたいと、野呂さん、そして第一期養成講座修了生とともに、以下のように「愛農かまど伝承者7箇条」を作りました。
これは私たち愛農かまどを大切にする者たちの願いです。
自作の方にも、修了生のサポートを受けていっしょに作る方にも、あるいは愛農かまどのことを知りたいと言う方にも、この7箇条をご一読いただければ幸いです。
愛農かまど 伝承者7箇条
1.愛農かまど伝承者は、「愛と平和」を主体的に担い、守り、育みます。
わたしたち伝承者は、
愛農会が掲げる5つの理念
「百姓は自立する、生命を守りはぐくむ、金にしばられない、大地の恵みに生きる、世界をつなぐ心となる」と
二つの祈り「愛と協同の村づくり」と「世界平和」を心に留めて愛農かまど作りに携わります。
また愛農かまどを作ることを通して、愛農かまど誕生の歴史的背景や継承されてきた経緯、愛農かまどが生み出す喜びや豊かさとともに、これら愛農会の理念を伝えていくことを大切にします。
2.愛農かまど伝承者は、「物語」を育む伴走者として歩みます。
わたしたち伝承者は、目に見える「物」を作るだけではなく、「愛農かまど」を手段にして
施主が自らの「夢」や「物語」を育むことができるよう協力します。
そのために、必要であれば対話やワークショップ(単なる作業ではない)等の手法を用い、
施主やその家族や仲間が事前から関わり、相談をして進めることができるように努めます。
また、材料の準備や仲間集めなど、愛農かまどづくりを地域とのつながりを深める機会にするという選択肢を
提案し、ひいてはそれらが共同体や社会を育むきっかけにすることを心掛けます。
3.愛農かまど伝承者は、「技」を磨き続けます。
わたしたち伝承者は、伝承者でありながら「伝承者を志す者」であることを自覚します。
自らの現在地を知り、繰り返しの鍛錬を行うことが技術力を生み出すと心得ます。
その道に終わりはなく、伝承者である限り、道具や材料の使い方、手順など、基本的な技術の向上に
日々精進し続けます。
お金や地位、名誉のためではなく、自らが引き継いだ歴史や先人たちの想い、
習得した技術や知識、経験をいかに次世代へ継承していくかに誠実に向き合い、「技」を磨き、「愛農かまど」にこめられた精神性を伝える推進力とします。
4.愛農かまど伝承者は、作り、使い、直すことができます。
わたしたち伝承者は、5基以上の「愛農かまど」をその全工程に携わり製作した経験をもち、構造や機能、
炊飯や調理の仕方を熟知しています。
設置場所や防火性能、煙突工事、薪の準備や火入、炊飯や調理の仕方、活用方法も含めて、施主からの相談に乗ることを通して愛農かまどの機能を最大限に引き出すお手伝いをします。
破損が生じたときにはその原因を特定し、それに応じた修繕方法を理解し、修繕の相談に乗ることができます。 設置をするまでも、したあとも、かまどと人に誠実に向き合い、世代を超えて使えるかまどに寄り添います。
5.愛農かまど伝承者は、かまど作りは掃除に始まり掃除に終わると心得え、実践します。
わたしたち伝承者は、かまど作りは掃除に始まり掃除に終わると心得ます。
日々の心の塵を払い誠実に生きる具体的な所作として掃除があります。
掃除は安全につながる具体的な一歩でもあります。
かまどを作りはじめる前に掃除や汚損防止の養生を丁寧に行うことは現場の特徴を把握し、
風土や仲間との一体感を高めることにもつながります。
作業の途中に掃除で一息入れることは、精神的にも物理的にもかまど作りの現在地を見えやすくしてくれます。 一日の終わり・全体の終わりに現場の掃除・道具の片付けを行うことは、ふりかえりや次への準備につながります。
6.愛農かまど伝承者は、風土に根ざした実践者です。
わたしたち伝承者は、「愛農かまど」は一つひとつが違う生き物であることを理解し、それぞれの場所に本来の姿で在る「愛農かまど」の誕生を助けます。
市販されている材料のみに頼るのではなく、伝統的な材料や地域にある自然資源、廃材を活用するなど、
さまざまな選択肢にも柔軟に対応できる力量と風土と響き合う感性を持つことを心掛けます。
7.愛農かまど伝承者はネットワークの循環を促します。
わたしたち伝承者は、「愛農かまど」の完成は新たな始まりと心得えます。
「愛農かまど」を中心とする人の輪へと施主やワークショップ参加者などの人たちをつなぎ、
経験・情報・食材・人が循環する火のネットワークをますます豊かに燃え上がらせることに尽力します。
さいごに、
愛農かまど伝承者は、正しさではなく矛盾や葛藤と共に在ります。
たくさんのつながりの中に私や私たちが生かされています。
愛農かまども自然や歴史の混沌の中から生み出され遺されてきました。
現場では予定した流れや設計図通りに進まないこともあります。
思い通りにならないことを受け入れた時に、自他やかまどの声が聞こえてきます。
共感や信頼をもとにご縁を育み、関わりあうことが大切です。