奥田信夫さん(愛農高校元校長)、美和子さん(元愛農会理事)夫妻
三重県伊賀市種生在住 設置年:2013年 制作方法:自作 取材日:2024年10月
愛農かまどを作ろうと思ったきっかけはなんですか?
信夫さん…
エネルギーをなるべく自給するような暮らしがしたいとは前から思っていたんですが、かまどについてはもともとあまりいいイメージを持っていなかったんですね。
出身が農家ですから小さいころからほとんど薪と炭で生活していて、当然家にもかなり大きな、愛農かまどより一回り大きなかまどがあったんです。それは買って来たものなんですが燃えが悪くて、それは今思うと、煙突の場所とか太さとか、木を燃やすところの構造とかがあまりよくなかったんだろうと思うんですけど、火を燃やすのは子どもの仕事だから苦労したんですよ。
母親も非常に苦労していた記憶があります。
それが15年くらい前に野呂さんのところにお邪魔したときに愛農かまどを見せてもらったら、案外小さいし、燃えやすくて熱効率もよく、予熱が利用できるように煙突を左の奥の方に作って熱がうまく回るようにしてあってオーブンもあるというので、これは面白いなと思って、これだったら自分でも作れるかなと。
かまどは自作されたんですか?
信夫さん…そうですね。(愛農会主催で開催した)愛農かまどのワークショップに部分的に参加して、ああ、だいたいこうすればできるんだなぁと思って、暇を見つけては作業をして、1週間とちょっとくらいでできたのかな。
作っているなかで難しかったところや印象に残っていることはありますか?
信夫さん…レンガを木型の形に合わせて削らないといけないんですが、それがなかなかね。細かいことを気にしなければいいんだけど、僕はどっちかというと気になるから、レンガを何個か無駄にしましたね。


どんなふうに使っていますか?
信夫さん…毎日食べるご飯は愛農かまどで炊いています。
美和子さん…それと主人が甘酒を作るのにけっこう麹を作るからそのための米を蒸すのと、一年のうち半年くらいは週1くらいのペースでお餅を搗いているのでそのもち米を蒸すのもぜんぶ愛農かまどで。
あとは切り干し大根や干し芋を作るのに材料を蒸したり、もち米を蒸して山菜おこわを作ったり、かまどでやるとすごくおいしいですね。
愛農かまどのおすすめポイントは?

美和子さん…
やっぱりほんの少しの薪でご飯が炊けるということがいちばんじゃないかな。
愛農かまどをこれから作るとか、作りたいという人に何かメッセージはありますか?
信夫さん…かまどの機能を最大限にしようと思うと、煙突の位置とか付け方とかが重要かなと思いますね。横引きを減らしてなるべくストレートに煙が抜けるようにするのが一つのポイントじゃないでしょうか。
美和子さん…私はかまどがあるだけで幸せ!っていう感じがあるから、かまど自体と、かまどと薪の暮らしを、とにかく「うれしい!」と楽しんでもらいたいですね。かまどがあるとうれしい気持ちになるよねって、それだけで。
なぜうれしい気持ちになるんですか?
美和子さん…火のある暮らしっていうのは人間の奥深いDNAを呼び覚ましてくれるような力があるんじゃないかな。
それで懐かしいような、あたたかい気持ちが湧き上がってくるのかな。それが暮らしの中にあるっていうのはやっぱりいいんじゃないかなっていう気がします。私の場合は具体的な原体験があるからなおのことですけれど。
その原体験とは?
美和子…子どものころ朝父がかまどでご飯を炊いてくれていて、起きたらちょうどいい塩梅でご飯が炊きあがっていたのよね。
そのぬくもり感がいまも私のなかに「あたたかいもの」としてあるんだけど、かまどがあることでそういう思いを生涯持ち続けられるような原体験をみんなが持って育つことができたらいいなと思います。
それに科学的にはわからないけど、かまどで炊いたごはんはパワーが違うよね、火には力があると思いますね。
